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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『裸千両』都若丸劇団@明生座9月1日夜の部

お芝居は『裸千両』でした。このお芝居は初めて。以下の大筋を。

母のおしげ(ゆかり)と妹お徳(ゆきか)とが営んでいる渡し場近くの茶店にやってきた遊び人の烏の官三郎(座長)、母が盲目なのをいいことに、今は堅気の商売で成功していると嘘をつく。[ここのところで本来なら裸に褌ひとつで登場するところなんでしょうが、若丸さんは胴巻きのような(時代劇にそぐわない)下着姿。笑いをとっておられました。前方に座っていた人たち、目のやり場に困ったのでは]。奉公人を大勢つれて来ていると母に嘘をついた官三郎。ちょうど雨宿りに通りかかった盲目の侍(星矢)が濡れた着物の着替えをする横からその着物を盗み、代わりに茶店脇に干してあった妹の着物を侍に持たせる。侍は女物の着物を風呂敷に包み、去って行く。

川端へやって来た赤子を抱いた若い武家の女性(ひかる)。そのまま大川に飛び込もうとするが、官三郎に助けられる[ここでも例によってひかるさんの後ろ姿をみて「子供とまちがえた」ギャグが] 。その女性から訳を聞きだす。女性の名はおぬい、闇討ちをして脱藩させられた夫、黒住源之助(英樹)の後を追って芸州広島から出て来たのだが、旅の路銀も底をつき絶望して身投げしようとしたのだという。同情した官三郎、その夫が食客をしているという親分、不動の英五郎のところへ夫を取り戻すべくかけあってやると約束してしまう。[ここでも座長、赤ん坊の人形をダシに遊んでおられました。ひかるさんも律儀におつきあいされていました]。

英五郎宅へやってきた官三郎、出て来た子分(剛)と言い争いになる [剛さんが手を骨折されているのをダシにして、散々からかっておられました]。騒ぎを聞きつけて出て来た英五郎、思いのほか話の分かる親分だった。かくまった黒住源之助を返すわけにはゆかないが、なにか償いをしようと持ちかける。渡りに船と千両をふっかける官三郎。怒る子分たちを尻目に千両箱を官三郎に渡す。重くてとても持ち上げられないので、六尺棒をもってこさせ、それで担いで行くようにという[ここぞ若丸座長の独断場。棒をつかってのシバイ、面白かった]。『笑いの歌舞伎史』に出きた元禄時代藤十郎の芸もかくやと思わせるもので、昔の舞台が再現されたような、そんな錯覚を覚えました]。

黒住源之助を呼び出した英五郎親分。彼に妻のもとに帰るようにいって、一家を追い出す。一家の娘と夫婦になって一家に住み着く算段が狂い怒った英五郎、官三郎を討つべく、子分を案内にして渡し場へ急ぐ。小休止をとっていた妻と官三郎に追いついた源之助。しかし、そこに例の盲目の侍、斗真がやってきて、父を闇討ちにかけた仇として源之助にうちかかる。仇討ちに臨みこの侍、風呂敷から父が着用していた紋付の着物を取り出したところ、相手の源之助にせせら笑われる[星矢さんが女ものの派手な着物を来た瞬間、客席も大笑い] 。あわてる官三郎。盗んで着用していた着物を脱いで侍に返す。二人が果たし合うが、斗真が先に斬られる。しかし源之助を後ろから刺したのは妻のぬいだった。二人は決闘の続きをするが、結局二人とも互いの刃で果てる。英五郎親分が子分たちをつれて駆けつける。死んだ二人に黙祷する親分。ぬいが無事に芸州に帰り着くよう、子分をつけてやるという。ぬいは赤子と千両と一緒に旅立って行く。

官三郎を気に入った親分は彼に一家の身内になるように勧める。喜んで受け入れる官三郎。[ここですかさず浪速節が。となるところ、浪花節をうなったのは若丸さんご自身。お涙頂戴シーンのバックに浪花節ってのは、大衆演劇の常套ですよね。 若丸さんはそれを換骨奪胎、徹底して茶化し、お涙頂戴のくさいシバイを転覆させるのです。 ただただ、お見事!]そこへ官三郎の母もお徳とやってくる。親分に口裏合わせのシバイをうつように頼み込む官三郎。しかし母は最初から官三郎の嘘を見抜いていた。官三郎が一家の身内になったと聞いて、喜ぶ母。官三郎がお徳の縫った着物をを着て、めでたし、めでたし。

第三部舞踊ショーのハイライト


冒頭は若手男性陣の舞踊。曲は不明。若手のひとりひとりが腕を格段に上げておられました。ここの若手はみなさん稽古のあとがはっきりとわかる上達ぶりです。つい先月、客を「嘗めている」としか思えない下手な若手のオンパレードを平気で乗せる劇団を観ただけに、一層そう思います。


剛 「それは黄昏」。久々の剛さん、改めてそのしなやかさと清潔さにうたれました。


若丸 「エレジー」。お色気路線というよりは、きりっとした小股の切れ上がった女。最後に顔に紅で二筋スメアをつけるところ、面白い演出でした。

 
城太郎 「初雪」。なんとも粋でカッコ良かった。こういう渋い踊り、城太郎さんにしか踊れませんよね。