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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

姫猿之助座長と咲之阿国さんのアドリブ掛け合いにハマる「劇団あやめ」の『浜の兄弟』@三和劇場 5月1日昼の部

今まで見たことがなかった「劇団あやめ」、圧倒された。実は4月26日にふと思い立ち、九条笑楽座に乗っているのを見に出かけた。前の週からインフルエンザで体調が悪く、第四部(!)の『四谷怪談』を見ることができなかったのが、残念だった。少し体調も戻ったので、29日の千秋楽も見ることができた。

たった六人から成る座員構成。座長を中心にして、見事なチームプレーを魅せてくれた。お芝居、舞踊ショーともに「歌舞伎」が入るのだけれど、それも本格的なものなのに感心した。今までに見てきた劇団で、最も「もどき」が秀逸だった。座長の八面六臂の活躍、芸のレベルがすぐれて高い。大衆演劇といわず、歌舞伎を超えるレベル。座長、猿之助のケレンに唸る。打ち出される様々な試みは、最近の歌舞伎若手の挑戦の先を行っているかもしれない。

猿之助」というのは、三代目猿之助(現猿翁)のケレン味溢れた芝居に憧れての命名だというのは、ご本人が以前おっしゃっておられた。「スーパー歌舞伎」が常に彼の目標としてあるのだと思う。大衆演劇という、乗る小屋も、座員も、かなりリミテッドな場でのこの挑戦には頭が下がる。様々な試みをしておられるので、できる限り見せていただきたいと思っている。

猿之助さんは、劇団花車におられた2009年9月に弁天座、2010年に朝日劇場で見ている。弁天で見た破れ傘を持っての舞踊、素晴らしくて、今でも目に浮かぶ。2011年に独立されてからは、拝見することがなかったのだけれど、連れ合いがファンで、天才肌の役者さんという噂は聞いていた。花車の中では、その図抜けた才能が生かせなかったのでしょう。宜なるかな。 

尼崎の三和劇場の初日は『浜の兄弟』だった。この芝居は他劇団でも何度も見ているけれど、さすが猿之助さん、手を変え品を変え、まったく退屈させない。当意即妙のアドリブ、そして掛け合いのテンポが速く、芝居に常にムーブメントができていた。それも九州系劇団の十八番である下品なものではなく、彼の人となりをうかがわせる優しい、温かいもの。気分が実に良かった! 

猿之助さんと「張り合う」名役者が咲之阿国(しょうのおくに)さん。彼女の頭の回転の速さに驚かされる。丁々発止と座長とやりあうのは、小気味がいい。この芝居でも網元の婆さん、わかめちゃんという二役を演じ分けて、おみごと!

ずっとお腹を抱えて笑い転げていたのは、この二人の掛け合いがあまりにもおかしかったから。九州の人とは思えない(?)大阪風の滑稽。そういえば猿之助さんのお父上の京之助さんは松竹新喜劇におられたことがあるとか。お父上から習われたのだろうけれど、新喜劇の芝居のツボが猿之助さんにしっかり入っていた。それもお父上よりずっとスマートに、軽妙に。

役は以下、登場順に。

網元         咲之阿国 

網元娘、おみよ    ひよこ

京蔵         初音きらら        

虎          千鳥

平蔵         猿之助

わかめ        咲之阿国
使いの娘       胡蝶う蘭(字が間違っているかもしれません)

 

大阪に多く乗るようになれば、大ヒットになると確信した。独立、立ち上げられてから、一旦解散された(?)こともあったようで、今の座員さんたちは前から(「花車」からの)千鳥さん、ひよこさんを除いては新しいメンバーだと思う。それでもチームワークが素晴らしい。芝居も舞踊も下手な人がいないのに、感心しきりだった。

5月スケジュールが発表されていたので、めぼしい芝居・舞踊演目を下に挙げておく。昼夜、芝居・舞踊替えとのこと!

3日   「女弁慶」

4日   舞踊劇「梅川忠兵衛」

5日   「ワンピース歌舞伎」猿之助祭り

6日   千鳥誕生日公演

9日   「四谷怪談」昼の部のみのロング公演

11日  猿之助祭り

12日  「座頭お市阿国祭り

13日  「黒田節」

16日  「母恋さつま」(真水を使った大立ち回りあり)

17日  休演日

18日  きらら祭り

19日  「船場心」ひよこ祭り

20日  「一休さん

23日  「油地獄」

25日  「大江戸ゴーストバスターズ

26日  「大江戸ホームアローン猿之助35周年

27日  猿之助イリュージョン・ショー

28日  令和記念 六人祭り

29日  千秋楽 夜の部まで 

実に多彩です。