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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

咲之阿国さんの熱演が光る「劇団あやめ(姫猿之助座長)」の『白痴殺しはお夏の犯罪』@三和劇場5月10日昼の部

かなり陰惨な話。主演の阿国さんが口上で、この芝居の由来を語られた。実際にあった悲劇を素にして、姫猿之助座長のお祖父様である(初代)姫川竜之助さんが創作された芝居だとか。当時はお夏を姫まどかさんが演じられ、そのあと、姫猿之助さんが演じられたという。それを継いでの主演。阿国さんの気の入れ方も半端ないだろう。それがビンビン伝わってくる舞台だった。

「お夏」とあったので、最初は例の「お夏清十郎」のお夏の話だと思った。というのも、この1月に篠原演芸場で「劇団荒城」の(「お夏狂乱」をベースにした)『狂乱』を見ていたから。ところが全く違ったソースからの芝居だったので、ちょっと拍子抜け。とはいえ、こちらも凝りに凝ったお芝居だった。

テーマは姉弟愛と子供の虐待。白痴ゆえに継母(千鳥)から事あるごとに虐められている清吉(ひよこ)。継母のお銀は病に臥せっている夫の看病もしないで、若い男新八(きらら)と逢瀬を楽しんでいる。清吉はそれを見たまま話すので、お銀にとっては厄介者。清吉の姉、お夏は父の世話をしつつ、働いているので、留守中のお銀の清吉虐めを庇いだてできないでいる。

お夏には言い交わしたまさ(猿之助)という岡っ引きがいる。彼はことあるごとに「困ったことがあったら、自分のところに来てくれ」とはいってくれるのだけれど、お夏は白痴の弟が足手まといになるのが心配で、頼りきれずにいる。

今日も今日とて、お夏からもらった握り飯を食べているのを見つかり、清吉はお銀からひどい折檻を受けた。それをかばったお夏がお銀から罵られて、嘆いているところに、まさがやってきた。姉弟を慰めるまさ。彼は清吉にお夏と一緒になったら、「大きなおまんま」を食わせてやると、約束する。喜ぶ清吉。それを見て涙するお夏。

まさとお夏が退出した後、またもやお銀から虐待を受ける清吉。それもエスカレート、顔に焼きごてを当てられてしまう。戻ってきたお夏は、衝撃を受ける。ここまでの虐待を受ける怒りと悲しみとで、錯乱状態になる。清吉は「死んだおかやんのところに行きたい」という。

それを聞いて、ある決死をしたお夏。納屋から斧を取り出し、清吉を殺そうと試みる。でもできない。泣きながら、清吉に納屋に行くようにと諭す。そしてそこでかかっている縄(実はお銀の腰紐)で、首をくくらせる。そこに、腰紐を探しにやってきたお銀。お夏は彼女も斧で殺す。

場面替わってお夏とまさ。「守ってやれなくて、ごめん」というまさ。お夏は自首するという。まさは十手を放り投げ、自首するお夏に付き添って行く。

 

先ほど、このお芝居の作者、姫川竜之助さんの写真をネットで見つけた。なんと、猿之助座長に瓜二つじゃないですか!才能もしっかりと受け継がれているんですね。