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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

兄弟間の愛憎が胸に迫る『夢現(ゆめうつつ)』in「勘太郎・蘭太郎の日」劇団荒城@浅草木馬館10月23日夜の部

これはもう一重に兄弟しかできない芝居。あらすじは以下。

ヤクザ一家の父が亡くなり跡目を継ぐ段になって、長男(勘太郎)は継がずに旅に出るという。次男(蘭太郎)はなんとか止めようとするが、長男は譲らない。その土地、川向こうにはもう一つヤクザの一家があり、そことは常々抗争を繰り返してきていた。それもあって、次男は継ぎたくなかったのだ。兄と弟は拳と拳を当てる別れの儀式をする。嫌々ながら、親分を継ぐ次男。兄には、きっと帰ってきてくれと言う。

 

一家の代貸(和也)が出先で、抗争中の一家の親分(真吾)から声をかけられる。なんでも自分の老いのこともあり、「一家を畳みたい。ついては賭場、縄張りの土地すべてを譲りたい。また、子分たちも引き受けてもらえないか」という提案・依頼だった。引き受け、一家に帰って親分と姐さんに話を通すと約束する代貸。相手の侠客としての仁義、そして人情に感じ入ってのことだった。

 

ところが帰って話を通すと、親分は大反対。代貸の説得にも耳を貸さない。挙げ句の果てに刀を出して斬りつけてくるしまつ。呆れた代貸は一家を出て行く。子分たちも悩んだ末、代貸の後を追う。

 

怒り狂った親分、「裏切った」代貸と子分を捉え、勝負を挑む。そのとき、旅に出ていたはずの兄がその場に立ち現われ、弟をきつく戒める。そして、彼に一対一の勝負を挑む。あえなく打ち負かされる弟。その弟に兄は説教、「素直になれ!」と諭す。川向こうの親分の依頼を受けるようにという。うなずく弟。そこで例の拳と拳を当てる「儀式」をする二人。

一家に帰り、川向こうの提案を受け入れると母に話す弟。代貸をはじめ子分たちも立ち戻ってくる。なぜ気持ちが変わったのかと訝しがる子分たちを、山の麓に連れて行く。そこには「先祖代々の墓」が。そこに兄貴が眠っているという弟。兄が跡目を辞退したのは、治る見込みのない病に罹っていたからだった。納得する子分たち。

これって、ブラザー(シスター)・コンプレックスの典型的な例ですよね。兄弟、姉妹の関係は非常に難しい。愛情と単純化するにはあまりにも複雑に絡んだ兄弟間の情。兄と弟にもそれはあるだろうし、姉と妹も同様である。愛してはいても、相手への嫉妬を含む複雑な感情が湧き上がる。ここのところを勘太郎さん、蘭太郎さんが見事に表現していて、感動!このお二人、うまい!