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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『関の弥太っぺ』三河家桃太郎劇団@鈴なり座2010年12月1日夜の部

この劇団を観るのは初めてだったのですが、以前から観たいと思っていました。浜松のバーデンバーデンで観たつれあいがよかったといっていたのです。

お芝居、さすがでした。基本をきちっと踏まえた構成、そしてなによりも座長の演技力、秀逸でした。

お芝居は『関の弥太っぺ』でした。主役はもちろん五代目三河家桃太郎座長です。この演目は大衆演劇ではおなじみのもののようですが、私は「寡聞にして知らず」でした。でも振り付きの歌で何度も聴いています。というわけで、今ネットで検索をかけてみました。Wikiでのサイトが出てきました。長谷川伸原作だったことが分かりました。もともとは東映の映画だったのですが、のちに大衆演劇の定番になったというわけです。彼は大衆演劇になった芝居を多く書いていたのですね。以下、Wikiからの引用です。

常州生まれの関本の弥太郎、人呼んで「関の弥太っぺ」は、生き別れた妹を探す旅で母のない少女「お小夜」と出会う。小夜の父「和吉」は盗賊であり、金を盗 まれた「箱田の森介」は和吉を斬って金を奪っていく。自分の50両も森介に持って行かれた弥太郎は宿場まで小夜を連れて行く羽目になるが、父の死を知らな い娘に妹の面影を見て心を動かす。(肩を抱きながら)「…この娑婆には辛い事、悲しい事がたくさんある。忘れるこった。忘れて明日になれば…。(空を見上げて)ああ、明日は晴れだなぁ」と娘を励まそうと明るい顔を見せる弥太郎。

以上の箇所は桃太郎さん、そのままに演じられました、でもその後の、「生きる目的を無くしたまま、助っ人稼業で命を張る弥太郎は、凄惨な容貌に変わっていた。」というところは、明るめに演じておられていました。

現代の観客にとっては原作そのままでは少し重いですよね。でも筋の要所、要所はきちっと押さえられていました。妹との生き別れ、たまたま出逢った少女に妹の面影を見るといったところはきっと観客の心を揺さぶるのでしょう。多分そこにある種の幻想を見出すのかも知れません。でも、肉親の情というのは、現代では原作が書かれたときよりもはるかに薄くなっています。だから、桃太郎さんがそこを「濃厚」味で演じられなかったことが、むしろしっくりときました。

そして、十年後の弥太のふりをして少女を自分のものにしようとするもとの仲間の森介とのどろどろした闘いも、もっと現代風になっていました。私など、つい精神分析的に視て深層心理解釈をしてしまいますが、いまどきの観客にはそういう風に演じてしまうと "too much" となりかねないでしょう。そもそも軸になっている筋自体がまさにフロイドのよろこびそうなものですから。

座員さんが少なめでしたので、お芝居をするにも、舞踊ショーも大変だろうと推察しました。その分、座長が何倍もがんばっておられました。

舞踊ショー、写真掲載の許可をいただいていないので載せられません。男性若手の方々(すみません、名前が分かりません)も目いっぱいに元気よかった。女性陣はみなさん踊りがお上手でした。日本舞踊の素養がおありなのでは。それと、男性でものすごーく上手な方がおられました。お名前が分かりません。ちょっと控えめな感じのかたですが、実力がスゴイ方だと察せられました。

そういえば座長の妹さんの三河家諒さんが13日から出演されるそうです。彼女は10月新開地の伍代孝雄劇団で観て、その演技力と踊りの完成度に驚いたものです。すばらしい女優さんでした。彼女もお兄様の座長も歴史のある劇団の実力をいやというほど示していますよね。

14日は花吹雪の寿美責任者と京之介座長、そして!伍代孝雄座長がゲストです。そして、18日はなんと!春之丞さん、真之輔さんがゲストです。よだれがでるようなメンバーですね。

18日は終演後に近所の居酒屋さん(帰りに通りかかったのですが、オシャレなお店でした)で、ファンの集いがあるそうです。会費3000円だそうです。こういうところ、ほんとうにすっきりとしていて、好感度アップでした。