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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『奥さま仁義』五代目三河家桃太郎2010年12月9日夜の部

圧倒的な存在感でした。もちろん桃太郎座長です。

堂々としていて、そしてそれがぶれず安定しています。だから観ている側もそれにシンクロして、なにか一座のものになったような気分になります。それでいて、決して狎れ合っているというわけではないのです。このなんともいえない距離のとり方、家父長制の中の家長のものなんですよね。これは、女性にとっても心地いいのですね(っていったら、私のフェミニストの友人たちの顰蹙を買うでしょうが)。

以前にやたらと親分風をふかす座長さんをこの劇場で観ました。そのとき、観客を仕切る感じが、なにか大上段から振りかぶった感じが嫌でした。それでいて狎れあっている感じも嫌でした。

桃太郎座長はまったく違いました。品格がおありでした。由緒ある劇団の五代目の品格、貫禄十分でした。お芝居、舞踊ともにそれを納得させるだけの実力でした。

口上もとても楽しかった。そして私にとっては勉強になりました。

三河家桃太郎」のルーツは江戸時代に発祥した小歌舞伎に遡るようです。それも大歌舞伎(これが今の歌舞伎です)の流れをくむ「芦屋歌舞伎」の名跡のようです。芦屋歌舞伎については聞いたことはあったのですが、この劇団のルーツがそこにあるというのは初耳でした。大歌舞伎に対して小歌舞伎があって、江戸、そして近代になっても交流があったとは本(それももうとっくに絶版になっている)で読みました。市川団十郎が九州まで指導にやってきていたこともあったそうです。もちろん話は成田屋のことに及びました。1月のテアトル銀座の「初春歌舞伎」、玉三郎さんが海老蔵さんの代役をつとめられるのだというお話でした。このニュース、初耳でした。嬉しかった。玉三郎さんは梨園の生まれでないにもかかわらず歌舞伎を極めるべく今でも精進されている逸材ですから。この役替り、南座の顔見世とあわせて因縁めいていますね。
ご本人、お酒は飲まれるけれど、暴れたりはなさらないとのこと。前にも書きましたが、18日には劇場近くの「もんり」というスナックでファンの集いをされます。会費は3000円です。座員さんもみなさんとても温かい方々ですので、きっと楽しい会になると思います。

お芝居は『奥さま仁義』でした。これは劇団花吹雪の千秋楽演目だったのに、私は残念ながら観ることができませんでしたので、ラッキーでした。花吹雪さんとの絆、強いのが分かって、これも嬉しかったです。


座長演じるおえんという女侠客が呉服屋の若旦那(甘田千恵子さん?)に見初められ、女将に納まるけれど、そこへ以前から彼女を追っていたヤクザたち(美河賢太郎さん)がなぐりこみをかけてくる。大立ちまわりの末連中を殺したので、兇状の旅に出るという話です。喜劇で、とくに番頭(京華太郎さん)をいじめる場面がハイライトになっています。若旦那の母を横尾成年さん、父を美河寛さんが演じておられました。お二方とも大熱演(?)で、お客さん大喜びでした。

照明がきつくなかったので、写真は比較的良く撮れました。といってもiPhoneなので画質に限界はありますが。許可をいただいたので以下に掲載します。

座長 イントロの群舞で。袴踊りのお手本でした。とくに手、腰、足の遣い方。凛としていて品と勢いがありました。

座長

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華太朗さん

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座長、お芝居は圧倒的な上手さですね。「三河家桃太郎、ここにあり」というのがびんびん伝わってきました。座員さんたちも座長の薫陶を受けられて、がんばっておられるのがこれまたびんびんと伝わってきます。客席もそれに素直に反応して、盛り上がっていました。伝統というものの強さと重さ、いやというくらい分かりました。