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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『母恋信州路』劇団花吹雪@八尾グランドホテル 2011年1月7日

お芝居は『母恋信州路』。これも新開地で観ました。でも、 観劇中に 登場人物の名前等をiPhoneのアプリ、Evernoteに入れたつもりが、保存していなかったようで、うろ覚えです。

亥之松という百姓が妹のおみよをつれて母を探す旅をかけている。おみよは道中の過労がたたって目が見えなくなっている。空腹で困っているところを上総屋の子分の佐太郎に助けられ、彼の親分の政五郎一家で世話になることになる。政五郎は親切で、長旅の二人をねぎらい食事もだしてくれる。

政五郎の女房は兇状の旅から帰ってきた一家の代貸しの銀二と以前から深い仲だった。銀二が旅に出ている間に、そうとは知らない政五郎に身請けされてしまっていた。焼けぼっくりに火がつき、二人は逃げることに決める。

翌朝早く二人が手に手をとって逃げようと神社の境内に来たところ、亥之松に出くわす。二人を必死にとめる亥之松。ドスをぬいてすごむ銀二は誤って政五郎の妻を切ってしまう。怒った銀二はさらに亥之松に切りかかるが、はずみで亥之松が払ったドスが自分の腹に刺さって、こと切れる。そこに佐太郎がやってきて、万事を観ていたという。親分に報告するというのを必死でとめる亥之松。親分の恥になることはできないという。佐太郎に、このことは決して口外しないよう、約束させる。

一家では二人の死骸を前にして、下手人探しをしている。そこへ上総屋に対抗している別の一家の親分がやってくる。上総屋では下手人は彼だと思い込んでいるが、否定される。そこへ亥之松が自分が二人を殺したと名乗りでる。逆上した政五郎は亥之松の片腕を切り落としてしまう。

亥之松は親分から出てゆくように言われ、妹と出て行こうとしている。佐太郎は二人の位牌に向かって、亥之松の悲劇を訴え、嘆く。それを聴いていた親分。彼にことの仔細を問いただす。白状する佐太郎。自分の早とちりに気付き、慙愧の念に耐えない政五郎は、亥之松の後を追う。

亥之松に追いついた政五郎は自分の早とちりを土下座して深くわび、一家に戻るように勧める。亥之松は自分の片腕のない姿がいろいろ憶測を呼ぶ可能性があるとそれを断る。その彼に、政五郎はまとまった金を渡す。おみよのために使ってくれと言って。感謝してその金を受け取り、片腕をかばいながらおみよと旅をつづける亥之松だった。 

 最初に見たときも片腕を切り落とすという「蛮行」にショックを受けましたが、今回もやっぱり衝撃でした。こういう暴力、「民主主義」、とくに戦後民主主義とはそぐわないものですが、むしろこれが現実に近いように思います。世の中には好むと好まざるとにかかわらず、暴力は存在するし、それをなくすことはおそらく不可能ですから。いくらきれいごとを並べてもそれが現実です。でも、惰眠をむさぼっている(もちろん私もその中に入っています)人間には、こういう過激さはきついものがあります。でもそれがお芝居のすごいところ。こういう形で直視しろと迫るのですね。