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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『天竜しぶき』都若丸劇団&恋川純弥さん(ゲスト)@京橋羅い舞座3月13日昼の部

若丸劇団では初めて観るお芝居。もっとも、似たような設定とプロットの作品は大衆演劇では何度も観ている。以下がそのあらまし。

子分の女房に横恋慕した悪い親分(城太郎)。その子分を凶状の旅に出す。女房(ひかる)を横取りするためだった。旅に出る前に、子分は兄弟分(純弥)に自分留守中、女房と妹(ゆきか)の面倒をみてくれと頼んでいった。律儀なその兄弟分は、なにくれとなく二人の面倒をみている。

 

ある日、親分が子分の女房を手篭めにしようとしているところをその兄弟分が止めに入るが、はずみで親分を刺し殺してしまった。兄弟分の妻と妹を連れて、男は逃亡の旅に出る。

 

天竜川に近いある在所に落ち着くが、子分の妻が心労のため病に倒れる。運の悪いことに、例の悪い親分を「伯父貴」と呼ぶやくざ一家の貸元(若丸)とその子分たちにつけねらわれる羽目になる。押しかけて来た子分たちにすごまれた心の病の妻。遂に帰らぬ人となってしまう。

 

とうとう、その一家が三人の落ち着き先に押しかけて来る。いっとき(約2時間)待ってくれと頼む子分。貸元は見かけによらず、けっこう話の分かる男で、猶予を赦す。天竜川の川縁での対決を約束させる。このときの若丸さんの「いでたち」がもう、なんといっていいのか、とにかく大迫力。全身に刺青の肉襦袢、褌一丁という姿。それに倣って子分たちも全員その扮装。素晴らしい肉体美の展示会。ゴチソウサマデシタ。この肉体美のダイナミズムと純弥さんのどこまでも穏やかな静謐とが、対照的でした。

 

子分の妹にその兄に渡すようにと手紙を託し、無理矢理旅に出した男。もう思い残すことはないと、決闘の場に敢然と向かう。一方妹は運良く兄(剛)に巡り会い、手紙を渡す。慄然とする兄。

 

決闘の場。昨日に続き東映の「剣友会」の方たちの応援もあり、ナカナカ迫力のある立ち回りでした。で、そこに兄が飛び込んで来る。兄弟分に向かい、「よくも女房を寝取ったな、親分を手にかけたな」と詰め寄り、二人の対決にしてくれるように言う。受け入れる若丸貸元。決闘とみせて、兄は自らの刀で自分を刺して果てる。「こうでもしなければ、申し訳が立たない、恩を返せない」と言って。さっきの言葉が狂言だったことが分かる。最期に、「妹のことを頼む」と兄弟分に頼みながら死んで行く剛さんの演技、迫力ありました。滅多に泣かない私も思わずほろりとしてしまいました。

 

駆けつけて来ていた妹の手を取り、供養の旅に出る男。それを見送る若丸一家の者たち。貸元は子分たちが頭に差した六文銭を「徴収」、それに自分の一両を足して、餞別として男に渡す。

 

 

 懐紙に包んだ六文銭を頭に巻いた鉢巻に差して決闘場に向かうというのを、初めて知りました。勉強になりました。