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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『裏町情話』都若丸劇団@朝日劇場 6月4日昼の部

種本は藤山寛美さんのものだそう。筋立てがきわめて入り組んでいる。隠したお金50両をめぐるドタバタ劇という点では『お祭り提灯』を思わせるけど、込み入り方、凝り方はそれ以上。

舞台装置、プロップはまるで大劇場にいるような完成度の高さ。さすが朝日劇場朝日劇場が(大衆演劇の劇場としては)日本一だというのがよく分かる。幕が開いて、この舞台をみただけで、ワクワクしてしまう。京都南座藤山直美さんの舞台を何回かみたけれど、朝日もそれに負けていない。役者は若丸さんの方が上だと思う。嘘だというなら、ぜひ今月の朝日劇場に足をお運びください。

筋自体は新喜劇版『ロミオとジュリエット』といったところ。二つの商家間ーー呉服の染み抜き屋と炭屋ーーの争いとそれぞれの息子、娘との恋愛を描いていて、その点だけみればシェイクスピアなのだが、違っているのは血なまぐさい闘いがないところ。シェイクスピアではキャピュレット家、モンタギュー家間の強い憎しみの連鎖が遂には若い恋人を死に追いやる悲劇であるのに対し、こちらは争う「仇同士」の両家が実は互いを陰では思い合っていて、若い恋人たちも最後は結ばれるハッピーエンドになっているところ。

もうひとつ大きな違いは、芝居の中心になる狂言廻しの役があるところ。狂言廻しは染み抜き屋の若旦那、若丸さん。それと炭屋の主人、城太郎さん。この二人のオカシイこと!上手い!親子ならでは(?)の絶妙の息。染み抜き屋の女将の弘子さん、次男坊の剛さん、それと炭屋の女房役のゆかりさん、その娘役のひかるさん、そして仲人役のあきらさん、それぞれの息もぴったりと合って、上方喜劇の醍醐味を味わせてくれる