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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『晴れ姿千両役者』都若丸劇団@京橋羅い舞座 3月21日昼の部

中村菊之丞(剛)さんを苛める紀伊国屋を去年11月の明生座での公演時と同じくあきらさんが演じた。

上方(浪速)ではすでに人気役者としての地位を築いていた菊之丞、父の遺言に従って、江戸でも役者として花を咲かせようとしていた。ただ、当時のこと、現代のようなメディアがあるわけではなく、贔屓もいない状態だった。江戸では「田舎芝居役者」とばかにされる日々。舞台では江戸役者からのイジメにあっている。この口惜しさと情けなさの感じを出して、剛さんが秀逸だった。さりげない表情の付け方がすばらしかった。何度も唸った。はんなりした上方ことばもまったく瑕疵がなく、菊之丞とそれを演じる剛さんの優しい性格がピタリと重なっていた。

対する紀伊国屋のあきらさん、こちらもホント感心した。詳細を控えなかったのが残念だけど、彼の台詞は以前より何段階もグレードアップしていた。彼はきっといろいろと勉強されているのだと思う。たとえば江戸役者が自分のことを「おいら」っていうのなんて、なぜご存知なの?そうなんですよね、かれらは自身をそう呼ぶんです。それと私が一番好きなのは、明生座公演の際と同じく、『鏡山』(加賀見山旧錦絵)を使ったところ。前にも書いたけど、あの有名な岩藤による尾上の「草履打ち」がそっくり踏襲されているところ。こういうことをやられると、困っちゃうんですよね、興奮して。アリュージョンの手法ですよ。 

菊之丞の弟子、菊之助役の星矢さんの演技にも感心した。この方と座長、副座長とのキャッチボール、すばらしい。そして、この日初参加の東映の谷口さん、菊之丞の(年嵩でも)最も新しい弟子のお菊(!?)を演じたんだけど、ホントにはまっていた。笑い転げてしまった。十年来の若丸ファンのIさんによれば、谷口さんは『鬼平』シリーズにも同心役で出演されているとか。あとで確認するつもり。「鬼平」DVDは全巻持っているので。

そして真打ちの若丸座長。登場するだけで笑いの渦が。台詞には以前とそう変りはなかったけど、細かい仕草、間の取り方等が微妙に違っていた。もちろんこの日の主役は剛さんなので、それを極力立てるような形にはされているんだけど、やっぱりすごいオーラが。