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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『上方土産』都若丸劇団@南淡路ロイヤルホテル 2月20日昼の部

初めて観るお芝居。以下がおおまかな筋。

亭主の留守中に贔屓の役者(舞斗)を家に引き込んだ女房(ゆかり)。そこに寄合いに出かけ、一晩帰らないはずだった亭主(若丸)が、不意に帰ってくる。慌てる女房、役者を押入れに隠す。亭主をなんとか口実をつけて家から出そうと腐心する女房。その都度、亭主は一旦は家を出るのだが、すぐに帰ってくる。その度に押入れから出る役者、慌てて隠れる役者、あたふたする女房というドタバタ劇が繰り広げられる。挙げ句の果て、寄合いで酒を飲み過ぎて気分が悪いと言って、亭主は押入れの真ん前で寝てしまう。困り果てる女房。というのも、役者は夜の部公演に戻らなくてはならないから。

 

そこへ竿竹屋(剛)が通りかかる。彼を呼び止め、なんとか役者を家から出る手伝いをしてくれと頼み込む女房。二分出すからという。それを聞いて、引き受ける竿竹屋(実はなんでも屋)。無理に亭主を起こし、自分が上方へ行った折に経験したことを、オモシロおかしく語って聞かせる。それがなんと、役者を引込んだ女房に頼まれ、役者を逃がす手伝いをしたという話。そう、まさに今進行中の出来事を上方土産の話として語ってきかせ、それに乗じて役者を逃がすという、なんとも見事な知恵の回り方。劇中劇の手法。実際と虚構とが入れ子構造になっているという寸法。

 

上方の話として聴いているのだが、随所であまりにも自分のことに似ているので、「?」と不審がる亭主。その都度、「上方の話」と「保証」する竿竹屋。最後は巨大な風呂敷を使い、その陰に役者を隠して家から出すことに成功する。顛末のすべてが自身のこととは知らず「参加」した亭主、「その亭主って奴はバカだね!」と嗤っている。ここにも逆転の発想がある。ニクイですね。

 

女房から最終的に一両をせしめた竿竹屋はほくほくで帰ってゆく。それを見送った女房はまたもや役者と逢っている。二人で逃げる相談をした女房、着物を取ってくるという。

 

一方、家では亭主が片付けをしている。座布団の下から女房が隠していた役者への恋文が出て来る。それを読んで一部始終を理解する亭主。怒りに燃える。風呂敷を広げ、その上に自分の着物を積み上げる女房の裏をかき、自分がその風呂敷の上に座り込む。てっきり着物だと思った女房と役者が中身(!?)を包み終え灯りをつけたところ、そこには風呂敷に包まれた亭主の姿が。ほうほうの態で逃げ出す女房と役者。それに向かって喚き立てる亭主で幕。

とてもよくできたお芝居。私がとくに好きなのは芝居冒頭から虚実の入れ子構造のさわり部分をみせ、それによって、舞台上で進行している芝居(虚)と客(現実)との間がときとしては入れ替わってしまう可能性をしっかりと暗示しているところ。その冒頭部が以下。

女房とその仲間の女達、それに6、7人の役者たちが集っている。まるでサロンのよう。女性たちにおかよが好みの役者がだれかを聞いている。ここからは「都劇団そのもの」の役者談義になる。

 

現実と虚構とが(虚実が)入れ子構造になっていて、これだけでもなにか面白いことが進行中と予感させる。はるかさんが、「剛さんが背が高くてカッコ良い」といえば、ゆきかさんは「星矢さんがカワイイ」という案配。それを聞いた星矢さん、「星矢はダメ。あれはケチ」ですって!続けて曰く、「そりゃ、なんといっても若丸座長でしょ。あのはだけた着物からみえるたくましい胸元!」。客席から「キャー!」という声が聞こえたような聞こえなかったような(タシカニ。セクシー度百パーセントですものね)