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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『火の車』都若丸劇団 with 小泉たつみ座長&葵好太郎座長(ゲスト)@羅い舞座京橋 3月16日昼の部

『火の車』は以前に2回観ている。ただ配役に入れ替えが。若丸座長が死神というのは同じ。でももう一人の主役、善兵衛の息子の善吉をいつもなら剛さんが演るところ、この日はゲストのたつみ座長が。剛さんは子分役に回っておられた。死神と善吉との掛け合いがみどころの一つになっているのだけど、この日は相手が好敵手のたつみさんだったので、若丸さんもちょっと勝手が違ったような。たつみさんによると、一週間前に打ち合わせをしたきりで臨んだ芝居だそう。普段、暴走するのは若丸さんなのに、その暴走を上回る暴走をたつみさんがやるので、かなり困られたのでは。「『屁理屈屋』たつみ」の面目躍如といった趣があった。それがまた、いつもにはない可笑しさで、こういう風にも芝居が立てられるんだとあらたな領野が広がった気がした。化学反応の妙というか、想定外の出来事にその都度対処しながら芝居を進行させるというすご技を、さすがこのお二人みごとにやってのけられた。ただ感心。おふたりとも間の取り方の妙手。途中からはそれに拍車がかかり、丁々発止、ものすごいバトルが展開した。ここに居合わせて、ホントに良かった。まあ、滅多にみられないでしょう。

それにしてもたつみさん、少しの「遠慮」もなく、真剣勝負に挑んだいうことは、若丸さんに全幅の信頼をおいているからに違いない。好太郎さんはいつもながら、こういうバトルには巻き込まれず、「高みの見物」という風情。でも彼がいることで、バトルになにかほっとする間合いができる。これもとても良かった。このお三方、ホントに贅沢な組み合わせ。

そのバトルは舞踊ショーにまで持ち込まれた感があった。若丸さん、たつみさん、好太郎さん、この三人の「バトル」の舞台、舞台に猛烈な気が充溢していた。