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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『二十年後の仇討ち』都若丸劇団@花園会館 1月11日夜の部

この京都での公演は昼夜のお芝居が替わる。もちろん、舞踊ショーも。劇団にとっては大変だろう。見る側にとっては、今まで観たことのない演目がくることが多くなり、楽しみが増えるんではあるけれど。 

座長の口上によれば、これは劇団が20年ぶりにかけるお芝居で、主役をはるのは初めてのこと。その頃はいわゆる「前狂言」の一つだったそう。たしかに主役は20歳そこそこの若者ということで、まだ入団して日の浅い役者が演じたんだろうと想像がつく。

プロットはシンプル。父親を彼の仲間に殺された子供(その当時赤ん坊だった)が、今や父親から奪った金で一家を立ち上げたその男に復讐するという話。昔のお芝居につきものなんだけど、プロット的におそらくいろいろな齟齬があったのを、若丸さん、意味が通るように組み立て直したんだと思う。以下が大筋。

父親を殺された子供、仙吉(若丸)は土地の親分結城の直造(城太郎)に拾われて育てられた。20歳を過ぎたその子は、幼い頃に階段から落ちて頭を打ったことが原因で、知恵遅れになり「バカ仙」と呼ばれている。一方、彼の親を殺した男、文三(剛)は一家を立ち上げ、飛ぶ鳥を落とす勢い。

 

今日は祭りの日、そこへ結城一家の若い衆、新吉(星矢)が散々殴られて帰ってくる。文三の賭場でインチキをしたということで殴られたのだと言う。その後を追って、文三一家が押し掛けて来る。因縁をつけるのだが、親分の娘を文三の息子の嫁に出してくれれば赦してやるという。

 

文三一家と仙吉との掛け合いが、おそらく若丸さん創作部分。剛さんがからかわれ、弄られます。手を焼くものの、相手が「バカ」だからということで真剣にはつきあえず、それをいいことにやりたい放題の仙吉座長。直造はこの縁談を断る。文三一家は怒って帰ってゆくのだが、帰ろうとして戸口に来ると、草履が全部繋がっている!仙吉の仕業。オカシイ。

 

直造はこれではきっと事は収まらない。きっと仕返しに来るだろうからと、「こちらから赤馬を出すか」と新吉に話す。一方仙吉は、置き手紙(きちんとした巻紙に認めてある)をして出て行く。それを読んだ直造が血相を変える。

 

最後の場もおそらく若丸創作部分。文三一家に独りで乗り込んだ仙吉。文三に「直造の気が代わり、お嬢さんを嫁に出すことにした。連れて来ている」という。このとき、散々気を持たせておくのですが、その合間に一家の一人一人をからかい、弄りたおします。「バカに抵抗しても仕方ない」と弄られ放題の文三と子分たち。ここが笑えます。「脚気の検査」をするふりをしたりなんやら。で、途中で「A**H***」という座長のことばが聞こえたような。空耳だったのかしらん。

 

お嬢さんを連れて来ていたのは真っ赤な嘘。暗闇にしておいて、文三と息子の手を持って来た短刀で刺し抜く仙吉。親の仇だという。そのあとの立ち回りで一家全員を皆殺しにする。そこへ直造たちがかけつける。

 

この復讐のために今まで痴呆の振りをしていたことを詫びる仙吉。どうして文三が仇だと分かったんだと聴く直造に、七歳のときに直造とおかみさんの話しているのを聞いてしまったんだという。

 

番所へ名乗り出るという仙吉を囲んで、涙する直造、新吉、そしてお嬢さん。

舞踊ショーは以下。ただし主たるもののみ。 

若丸   女形 「川の流れのように

袖周りにフリルのついたクリーム地のお着物。黒にゴールドラメを散りばめた裏地が蹴出しとなってで煌めいてキレイ。きらきらした簪もキレイ。

 

群舞に座長参戦 「風流江戸小唄なんてね」

座長は真っ白なお着物の芸者姿。艶やか。

 

星矢  「はぐれこきりこ」

襟と裾にスパンコール刺繍がさりげなく入った、艶のある濃いグレーのお着物で。白帯。

 

ゆかり  歌 「ノラ」

ドレス姿。ほんとうに息を呑みました。圧巻!

 

剛  「男酒女酒」

白のお着物に黒帯で。清楚なのが剛さんらしい。

 

若丸   立ち 「と・も・こ」

黄色いお着物で。「遅かったラブソング」のフレーズに泣けました。以前にも聴いて感動した曲。