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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『明日に翔る龍』都若丸座長誕生日公演@新開地劇場4月9日昼の部

若丸座長34歳の誕生日公演。お芝居、『明日に翔る龍』は圧巻だった。龍馬役はもちろん本日の主人公の若丸座長。脚本・演出も若丸座長。龍馬暗殺に至る「悲劇」を描いているのだが、あくまでも深刻にならず、未来の日本への強い期待と希望が語られる内容だった。幕間狂言が現代の「龍馬」の姿を示していて、劇全体が過去(幕末)/未来(現代)の二重構造になっていたところに、それがよく表れていた。初めのナレーションで「史実ではありません」という断わりがあって、たしかに史実ではないかもしれないけど、それでも龍馬の精神は強く訴えかけてきた。それになにより、史実に忠実に従わなかったことで、エンターテインメント性が増し、観客もワクワクしながら舞台に感情移入できた。

配役は以下。

坂本龍馬    若丸

中岡慎太郎   純弥

土方才蔵    良太郎

沖田総司    好太郎

武市半平太   たつみ

岡田以蔵    純

勝海舟     城太郎

東映の俳優陣で

西郷隆盛 

桂小五郎  

佐々木只三郎(京都見廻り組長) 

現代の龍馬  舞斗

龍馬の父   あきら

龍馬の姉   京香

高校生    雅輝、紗助、晴香、ゆきか

やくざたち  山田、松永、小泉さんたち東映俳優陣

会社社長   小雁師匠

 DVDが出るまではネタバレは無し。でもひとこと。いちばん感動したのは未来(現代)にタイムスリップした龍馬のせりふ。歴史をこういう風にみる視点に、しかもそれを無理なく「劇中劇」という形で呈示するという手法に感服した。ひねくれ者の私ですら、龍馬の「争いのない時代がやってくる」というところで、思わず涙してしまった。もちろんその視点があるから、最後の龍馬の死が生きてくる、そして胸に迫ってくる。

今年初めて誕生日公演に「参加」することができ、若丸さん、座員さん一同、ゲストのみなさん、東映俳優陣と時間を共有することができてよかった。すばらしい舞台だった。改めて若丸さんの才能に、そして才能だけでなく人を引っぱって行くリーダーとしての力にも驚嘆した。「若丸という人物」に感動したと言った方がよいのかも。去年(DVDで観た)『復讐の剣鬼』がどこか暗く、重いトーンだったのに比べると、今回のお芝居はどこかふっ切れた感じ、突き抜けた感があった。充実と自信が溢れていた。そして、何よりも心より楽しんでおられるのが分かった。もちろんそれは観客にも伝染。活気に満ち満ちた応酬で劇場が揺れていた。

ゲストの恋川純弥さん、大川良太郎さん、小泉たつみさん、葵好太郎さん、恋川純さん、烏丸遊也さんといった役者さんたち、そして東映の俳優さんたち、そして座員さんたち全員にそれぞれに合った役が割り当てられていて、それにも感心した。こういう「配慮」は全面的に采配を揮えるご自身の舞台だから可能だったのでしょう。

もう一つ、すばらしかったもの、それは舞台装置、大道具。いままでこんなに大掛かりなもの(しかもそれが数回あった)を新開地劇場ではみたことがない。若丸さんと棟梁の協力のもとに完成したのだろう。見ていない人はぜひDVDで確認を。