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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『BLADE 復讐の剣鬼』第五回都若丸誕生日特別公演DVD版

昨日都若丸劇団公演に行った折に入手した。今年の4月9日の新開地劇場における若丸座長誕生日公演を録画したものである。脚本・演出・主演は若丸座長である。

 さっそく観て、着想、構成、配役の見事さに舌を巻いた。もちろんすべて若丸さんの手による。「LINK」メンバーの恋川純弥さん、大川良太郎さん、葵好太郎さんと若丸さんの四人を中心に、若丸劇団座員、恋川劇団座員が加わり、さらに東映太秦の俳優陣も加わっての総勢、39名でのお芝居である。芦屋小雁さんも客演している。

 大衆演劇で「ここまでの舞台ができるのだ」ということを、世間にアピールする若丸座長の強い意思は、どの場面からもびんびんと伝わってくる。ひとことでこの芝居を表現するなら、時代劇の設定を借りた現代劇というところか。その構成自体は現代劇的というかサスペンスドラマの態をなしている。このあたり、映画的。「復讐」がテーマになっているのはタイトルからも明らかであるが、なぜ復讐なのか、何のための復讐なのかというのは、薄皮をはがすように、一つ一つ明らかにされてゆく。つまり、クロノロジカルな時間軸に沿って復讐劇が展開するのではなく、ひとつひとつの出来事が、過去の出来事をたぐり寄せ、それによって主人公の行動の所以が明らかにされるという形を採っている。物語中の時間は、いわばジグザクの時間として示されている。映画のフラッシュバックの手法を駆使したものである。この凝り方!こういう映画的手法はテレビ版「鬼平シリーズ」にも共通している。映画的構成を念頭に「鬼平」を書いた池波正太郎の原本に「忠実」であるためには、この手法が必至だったのだ。昔の時代劇(例えば「水戸黄門シリーズ」等)の手法とは一線を画している。きわめて斬新な手法というべきだろう。こういう時間構成は、観客にかなり「知的」なストレスを強いる。若丸さんがそれをあえて試みたところ、あっぱれ。

 もちろんこういう劇構成は小劇場系の芝居でもみられるものだが、それらの多くが「奇を衒った」もの、よくいえば、知的ゲームを観客に仕掛けるものであるのに対し、この芝居にはそういう「ひとりよがり」はない。斬新とはいえ、そこは大衆演劇。エンターテインメントの粋は散りばめられている。この辺りも、実に確信犯的。