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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『千代田の嵐』都若丸劇団@花園会館 1月21日夜の部

今月の公演、毎日昼夜で出し物が替わる。この日のみ昼の部がなく、夜の部のみだった。幸いなことに、私にとっては初めてのお芝居。最近テレビでもとみに時代劇が少なくなっているようだけど、この作品はまさにその時代劇。幕が開いた途端、『鬼平犯科帳』のワンシーンかと錯覚したほどだった。3年前に池波正太郎にはまりこみ、『鬼平犯科帳』はそのDVDシリーズをすべて収集したのだが、その役人詰所のシーンが出てきたのかと思ったくらい、雰囲気がそのままだった。

帰宅してからネット検索をかけると、このお芝居で「書院番」と呼ばれている役職は実際に存在していたことが分かった。それのみか、私が『鬼平犯科帳』との共通点を感じたことがさほど飛躍でないことが判明!というのも、鬼平こと長谷川平蔵のモデル、長谷川宣雄は「書院番」だったことがあるらしい。当時、書院番若年寄支配下だったそう。道理で芝居中も若年寄が取締役として登場していた。納得。将軍直属の親衛隊だったという。こういう時代考証に裏打ちされた「時代劇」、さぞ東映の谷口さん、松永さんはやりがいがあっただろう。座長はじめ、剛さん、星矢さんたちの言葉遣いも、きちんと当時の侍のものに則とったものだった。

もう一点判明したのが、どうもこのお芝居にはソースがあるらしいこと。それが『魔像』(東映、1956)という映画。でも話の展開が、ちょっと違う。映画の冒頭のあらすじは以下。

西の丸書院番士に登用された旗本神尾喬之助は江戸小町といわれる園絵と華やかな結婚式をあげた。だが喬之助と園絵を張り合った番士与頭戸部の怨みは深く権力を笠に喬之助をいじめた。喬之助の同僚たる十七名の書院番士も、番頭脇坂を叔父にもつ戸部にへつらい、喬之助をいたぶる様には部外者の大岡越前守すら心を痛めた。遂に喬之助の怒りは爆発、喬之助は戸部を斬り十七名の番士の首に復讐を誓って姿を消した。

『千代田の嵐』の方のおおまかなプロットは以下。

美しい札差の娘、おそのと結婚した早川平馬(英樹)。書院番士として赴任するが、その書院番の番頭高山(剛)、それにおそのに横恋慕していた同僚の桜井(星矢)たちによって貶められ、詰所で自害して果てる。

 

一年後、早川の弟、早川鉄之助(若丸)が書院番として赴任して来る。彼は千葉道場の「小天狗」と異名をとるほど、剣術の達人である。兄の死の真相を知りたいと切望していた鉄之助。だからこの赴任はまさに好機到来だった。その彼に、若年寄(あきら)が手紙を渡す。そこには、彼の兄が高山たちにむごくも嵌められ、死に追いやられた真相が認めてあった。

 

鉄之助は兄がいたぶられたプロセスを逆転、それを逐一高山たちに適用する。泡を吹く高山たち書院番。最後は斬り掛かってくるが、応戦した鉄之助に斬り殺される。

 

下っ端の書院番すべてを殺した鉄之助。最後に高山と大たち廻りの末、仇の高山を成敗する。そしてあの世の兄にそれを報告。覚悟を決めて、切腹して果てる。ここ、感動的でした。

ちょっと残念だったのが、私の周りの年齢層比較的低めの観客数人が大しておかしくもないところでけたたましい大笑いを連発したこと。かなり耳障りで参った。と同時に白けてしまい、せっかくの感興が殺がれた。これは若丸劇団では初めての経験。こういう自己顕示欲の強い人たち、他劇団にはいましたけどね。まあ、芝居を一応は観ている分、芝居中でもずっと携帯を弄っている人種よりマシか。