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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『利根の朝霧』たつみ演劇BOX@新開地劇場9月10日夜の部

『利根の朝霧』は笹川繁蔵と飯岡助五郎の抗争を描いたもの。大利根河原の決闘としても有名。大衆演劇の定番。今回の芝居には平手造酒が絡む。虚実ないまぜになった話で、いかに自分たち流に創作するかが、各劇団の腕のみせどころ。劇団によっては平手造酒にのみスポットライトをあてて、話を再構成するところもある。私はこちらの方が好みで、このような抗争そのものに重点を置く芝居は苦手。これに人情悲劇の要素が入っていて、というか常套の「我慢に我慢を重ねた末、ついに堪忍袋の緒が切れて」という筋の持って行き方に馴染めない。安っぽい悲劇になってしまうように思える。

ともあれ、今回はゲストの恋川純弥さんが平手造酒、つまり主役を張った。もう一人のゲストの葵好太郎さんは笹川の一の子分、勢力富五郎役。笹川繁蔵をたつみさん。繁蔵のもう一人の子分をダイヤさん。飯岡助五郎を宝良典さん。いままでにたつみ演劇BOXでは観ていない芝居だと思ったら、たつみさんが口上で「久しぶりの芝居」とおっしゃっていた。

恋川純弥さんの平手造酒がよかった。彼が造酒をするのをみるのはこれでたしか三回目。前の二回は彼が恋川劇団で座長をしていたとき。さすがに役の描き方に説得力があった。ずいぶんと減量され、胸の病に苦しむ造酒にぴったりだった。純弥さんにはハンパないオーラがあると、改めて強く感じた。それとお人柄の清潔さ。彼が新開地に乗るのを、ファンが待ちこがれる気持ちが理解できた。