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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『晴れ姿千両役者』都若丸劇団@梅田呉服座 7月18日昼の部

以前に一度観て、よくできた芝居だと感心したもの。若丸さんのことだから時代考証もパーフェクトなんだろう。そういえば先月朝日劇場でお目にかかった若丸ファン歴11年とおっしゃる男性はその点をとくに褒めておられた。私はその辺りが疎いので、あらためて若丸さんの拘りを理解した。今日の芝居は江戸時代の役者を扱ったものなので、ことさら興味深かった。おおまかな筋は以下。

中村菊之丞[屋号は河内屋](剛)は上方、大坂から江戸に出てきた花形役者。大坂では名を売っていたが、江戸では無名に近い。江戸役者より上手いので、なにかと他の役者のいじめにあっている。とくに紀伊国屋(城太郎)のそれはひどく、自身の舞台での失敗を菊之丞がかばってくれたのに、逆にそれを恨みに思っている。

 

今日も今日とてこの紀伊国屋、道端で出くわした菊之丞に難癖をつけ、挙げ句の果てに菊之丞の額を扇子で打って傷をつける始末。一緒にいた菊之丞の弟子たち(星矢)は怒るが、師匠の菊之丞に宥められる。

 

弟子たちを先に帰した菊之丞が川端でもの思いに耽っていたところ、傍に寝ていたおこも(英樹)に声をかけられる。菊之丞に同情したこのおこも、以前に菊之丞の舞台をみたことがあるという。すばらしい舞台姿だったと褒め、自分を「贔屓」の一人に加えて欲しいと言う。快諾する菊之丞。このおこも、「おこも連合」なるおこもの組合組織に入っているのだといい、他のおこもたちにも菊之丞の贔屓になるように勧めると請け合う。

 

菊之丞が立ち去ったあと、いなせな親分風の男(若丸)が現れ、おこもに数両恵む。あとでこの金子の「意味」が判ります。

 

所変わって、菊之丞の住まい。弟子たち(星矢・舞斗・松永さん)は紀伊国屋の仕打ちを怒っている。「自分が不甲斐ないから」と弟子たちに詫びる菊之丞。自分といてもうだつが上がらないから、大坂に帰ってもよいという。師匠についてゆくという弟子たち。

 

一人のおこもが玄関先にやってくる。なんと先ほどとは姿変った例の親分(若丸)。さっきのおこもと同じ服装。案内を請うが、弟子たちは追い返そうとする。騒ぎを聞きつけて、奥から菊之丞が出て来る。反対する弟子を尻目におこもを内に上げる。ここでの若丸さんの「演技」が大ケッサク。手が「不自由」な上に変な癖(回り出したら止まらない)があり、それを抑えるのに棒を持っているという設定。棒を弟子に取り上げられたこのおこも、火鉢の周りをものすごい勢いで回り出す。最初の一周りでは舞斗さんが差し出した棒を「無視」して回り続け、二周り目でやっと止まります。お腹を抱えて笑いました。

 

このおこもが菊之丞にいうには、自分は「おこも連合」の会長で、菊之丞が気に入ったので贔屓にしたい。ついては二人で「固めの盃」をしたいと。大反対する弟子たちを尻目に、喜ぶ菊之丞。おこもがずた袋から取り出したのはふちが欠けた椀と銚子。椀に酒(あちらこちらから集めてきたとのこと)を注いで、菊之丞に勧める。さらにずた袋からちくわ(!)を出して勧める。このときちくわの穴に指を突っ込んでいます。仕方なく食べる剛さん。またまたずた袋に手を突っ込んで、今度はちくわを五本の指全部につきさして弟子に勧める。笑えました!得心して帰ってゆくおこも。この場面でもすったもんだの騒動で笑えました。

 

弟子たちは、「あんなおこもを贔屓にするのは反対だ。それなら自分たちは大坂に帰る。おこもをとるか自分たちをとるか、はっきりしてくれ」と、菊之丞に迫る。「おこもといえども大事な贔屓。あんたたちの好きなようにしなはれ」と、突っぱねる菊之丞。仕方なく荷物を持って出て行く弟子たち。彼らが去ったあと、自分の不甲斐なさを嘆きながら、菊之丞は自害しようとする。

 

一旦出て行った弟子たちが駆け込んできて、菊之丞を制止する。そして芝居小屋に「菊之丞」と銘打った幟が多く立っていたと報告。そこに芸者、若衆をつれた新門辰五郎がやって来る。なんと例の親分/おこも。あらためて自分のうった芝居だったと告げ、今後は菊之丞の贔屓として末永く後援することを約束する。