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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『新造船』都若丸劇団@梅田呉服座 7月28日夜の部 

喜劇ではなかった。普通の人情劇。以下、あらすじ。

 網元をしていた父の下に生まれた兄弟、信吉と信太郎。信太郎は父が網元として集金した金を持ち逃げしてしまう。残された父はその弁財に苦労。それが祟り、亡くなる。残された信吉(若丸)は漁師として父の跡を継ぎ、借金も返した。ただ、漁師仲間には依然として片身の狭い思いをしている。母(ゆかり)は信吉に済まないと思いつつも、行く方知れずの信太郎の身を案じている。

 

今では信吉はおかね(ひかる)と所帯をもっている。その上、うれしいことに新しい船が竣工、今日はその引き渡しのセレモニーが行われる日。仲間の漁師たちが祝いに信吉宅に赤飯、酒を持って祝いに駆けつけている。漁師たちが汚いおこもが竣工した船の周りをウロウロしていたので、気をつけるようにと忠告する。

 

彼らが帰った後、一人のおこもが信吉の家の戸口に立っている。顔は頬被りで隠し、傘を大事そうに小脇に抱え、その出立ちもいかにもみすぼらしい。おかねが応対し、母を呼ぶ。そのおこもの顔をみた母は驚く。行く方知れずになっていた信太郎だったから。二人は手に手をとって、喜び合う。金を持ち逃げしたのは、江戸で一旗揚げるための資金にしたかったからだといい、それを詫びる。江戸では材木問屋に入り、トントン拍子に出世した。ところが彼の不始末で火をだしてしまい、材木は焼失。店にいられなくなり、挙げ句の果てにはおこもにまで身を落としたのだと語る。涙にかきくれる母。

 

奥から信吉が出て来る。ここで母とおかねは必死で信太郎を後ろに隠す。隠れているのがおこもだとみて、信吉は「赤飯を恵んでやれ」という。が、顔を見て、おこもが実は弟だと気づく。怒る信吉。「父がどれほどの辛苦の末に亡くなったか。殺したのはお前だ」となじる。せめて赤飯を恵んでやりたいという母を無視、すぐに出て行けと突き飛ばす。泣いてすがる母。

 

信吉が奥に引っ込んだ後、母はおかねに赤飯をもってくるように頼む。赤飯を持って戻ったところを、信吉にみつかってしまう。信吉は「おまえになぞ、三日前の麦飯で十分だ」といって、奥に再び引っ込んで、手に(竹細工の)弁当箱をもって現れる。それを信太郎に渡し、追い出す。

 

追いかけようとする母。そんなことをすれば自分が家を出ると息巻く信吉。女房のおかねも母の肩をもち「お前さんがそんなにひどい人だとは思わなかった。離縁します」と見得を切る。二人のやり取りが深刻そうでいて、楽屋落ちも入りどこかオカシイ。

 

そこに船を造り信吉に引き渡した男(あきら)がやってくる。「なにしろ手に入るいちばん上質の材木を木場からとりよせて造った船だ」と自慢する。「しばらく待ってやってください」と頭を下げる信吉。驚く母とおかね。なぜならそれはすでに用意して仏壇にしまってあったことを知っていたから。その男が帰ったあと、二人はなぜある筈の金が消えたのかと、信吉に問い質す。そこで、新吉が麦飯弁当といって信太郎に渡した弁当箱の中身が分かるという設定。

 

二人は信太郎が「忘れて行った」傘に気づく。それを開けると何枚もの小判が。そして手紙が認めてあった。それには母とおかねにした話は嘘で、実は今では江戸は木場のいちばん大きな材木問屋の主人になったこと、芝居を打ったのは兄の気持ちを確かめたかったからと、書かれてあった。驚く三人。

 

そこへ漁師たちが押しかけてくる。なんでも新造船の周りには賑々しくのぼりが建ち並び、芸者衆がウチ揃い、多くの酒樽が用意されているとの報告をする。ぱりっと紋付袴に着替え、店の者、芸者衆を従えた信太郎が入って来る。そして嘘を詫び、今では木場一の材木問屋の主人になったと、改めて明かす。

 

最後の決め台詞、「道は違うも漕ぎ出す兄弟船」という二人の約束で幕。バックにかかるのは当然(?)ながら「兄弟船」。おもわず「くすっと笑ってしまいました。若丸さんらしく、ここでも「外し」の精神が垣間見えました。こういうところがすごい。べったりした「お涙頂戴」の兄弟もの人情劇と一線を画しているところ。この新しさこそ他の大衆演劇の劇団にないもの。カタルシスが安っぽくない。

 舞踊ショーは以下に。

第一部

剛・星矢・雅輝   ?

二人で星矢さんを除け者にしています。オカシイ。

京香         京都慕情

星矢        ?

雅輝        LIPS

若丸          酔歌

中舞踊       花吹雪

星矢        すまない

若丸         手鎖の月 

男性陣        ズンドコ節?

英樹         津軽望郷じょんがら

剛          仁吉劇場

ゆかり        酒供養

中舞踊       ?

男性陣の女形舞踊。若丸さん、参戦。 

あきら          相馬?歌

若丸         THEアキラ節

まいと        すいかずら

若丸        明日への讃歌

キャプテン      風の坂道

ラスト舞踊     桜の花の散るごとく