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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『度胸一番』&「TOKIO’s Live 」都若丸劇団@梅田呉服座 7月27日夜の部

お芝居は『度胸一番』。初めて観るお芝居だった。明らかに『幡随長兵衛』のもじり。「本家」のお芝居では長兵衛は町奴だけれどいわば江戸町民の代表で、片や彼を湯殿で殺す水野十郎左衛門は旗本、つまり侍の代表として描かれている。この若丸バージョンでは長兵衛に当たるのは与太郎(若丸)で、水野に当たるのは小泉純三郎(?!)ということになる。『幡随院長兵衛』がいくら町奴の反骨精神とその英雄的な死を描い町奴の美学を描いているとはいっても、なにか理不尽さを残すのに対して、若丸バージョンはハッピーエンドになるよう、作り替えられていた。その上随所にずっこけ満載のお笑い要素が加味され、喜劇の味付けがしっかりとしてあるので、抵抗なく観れる。本家(本歌)の「英雄の美学」なんてものを覆してくれる。

おおまかなあらすじは以下。

江戸は深川、芸者置屋兼料亭「一力」は、やり手の女将(ゆかり)で持っている。その娘のお葉(はるか)は板前の喜助(舞斗)と思い合っている。「一力」の芸者、奉公人もそれを応援している。ようやく女将もそれを認め、その晩は仮祝言をあげるという話になった。

 

そこに三年もの間留守にしていた長男の与太郎が帰ってくる。おきまりの母と息子の喧嘩。周りはハラハラするが、実際には母子は互いに理解し合っている。座長はいうに及ばず、ゆかりさんの演技が光っていました。

 

そこへ料亭の客の旗本三人がやって来る。その中の小泉純三郎(剛)はお葉を娶りたいと女将に掛け合うが、あっさりと断られる。お葉の相手が板前と聞いた小泉はその男を出せと息巻く。喜助が板場から出て来る。それに侮蔑の言葉を浴びせる小泉。怒った喜助がたてつくと刀の柄で喜助の額に傷をつける。このあたりまで大衆演劇の芝居によくあるパターンで進行しています。奥から与太郎が出て来て、小泉たちを追い出す。

 

最初の幕の冒頭とこの間に置屋の芸者(星矢)が登場。その「おかまっぽい」口調と仕草で、喜劇を盛り上げます。

 

どんな仕返しが水野ならぬ小泉からくるのか、心配する母の女将。そこへ案の定小泉から与太郎宛てに屋敷まで出向くようにという手紙が届く。慌て、不安におののく女将と一同。

 

奥から与太郎が出て来る。なんと!幡随院長兵衛もどきに羽織袴姿で。戸口を出た与太郎、長兵衛の場合と同じく、自身にもしものことがあったらいかに対処するのか、喜助に指示を出す。長兵衛の場合は「棺桶を用意してこい」というものでしたが、ここでは変えていました。

 

小泉邸。小泉と安倍某(山田さん)、あと一人(あきら)の名が聞き取れず(政治家の名前だったのでしょうが)三人が揃って与太郎を出迎える。与太郎、入って来る時点でちょっとすったもんだ、さらに三人をからかい、イジリ倒す。オカシイ。その一つが『桃太郎侍』の真似。挙げ句の果てにドスならぬ出刃で三人に対抗する。

 

そこに登場したのは小泉純三郎の伯父、中曽根外記(城太郎)。この名前もオカシイ。一力の女将に頼まれたと言い、純三郎を叱る。仲裁が実り、純三郎と彼の友人二人は謹慎処分となる。

 

純三郎は与太郎の男ッ気に惚れたといい、今後は仲良くすることを約束する。侍が町民にいばりたおすそういう時代の変わり目を象徴している?

 

めずらしく剛さんが噛み、城太郎さんも噛みで、客席から笑いが起きていました。若丸さん、「うちにはまともなのがいないのか!」(笑)。