okamehachimoku review

大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『ある日の殿様』劇団花吹雪@新開地劇場2010年11月21日夜の部

今月、ちょっと嫌なことが続いたのですが、花吹雪さんの舞台を観て元気をいただきました。このような癒しを観劇には期待していなかったのですが、今回初めて体験することができました。花吹雪さんを観れるというだけで、どれだけ落ち込んだ気持ちが救われたことか。ご自分の命を削って芸を磨くことで、観るものを癒し、安らがせるという崇高な使命をもっておられるのだと思いました。そしてまた、わが身を振り返り、「おまえは真剣に生きているのか」という問を投げかけるきっかけを作っていただきました。

今や私の中では総合点でいちばんの劇団です。古典的な基本を踏まえつつ現代風にアレンジしたお芝居、そして舞踊での創意工夫、さまざまな趣向をこらした舞台、若い男性の劇団員が(春之丞さん、真之輔さんを除いて)4人もいて、それぞれに個性的で上手なこと、真之輔さんの目覚しい成長、そしてなによりも春之丞さんのお芝居での表現力の卓越とそれに加えての安定感、これらすべてを総合して、今まで観てきた40数劇団の中ではいちばんです。もちろん、今まで観てきた劇団にはそれぞれの素晴らしさがありました。だからこれはあくまでも私の個人的な感想です。

今日のお芝居は『ある日の殿様』という喜劇で、主演は真之輔さんでした。駕篭屋と殿様の絡みを描いています。藤山寛美さんの十八番狂言だそうです。真之輔さんは少し足らないけど人の良い駕篭屋を、その相棒を愛之介さんが、殿様を春之丞さんが、悪い十手持ちを京之介さんが、そして茶屋の娘をかおりさんが演じられました。劇自体は大した山がなく、ほとんどが駕篭屋と殿様のトンチンカンな会話でみせるものです。

真之輔さんが面白メークでがんばっておられました。自然体でいて演技には安定感があります。お上手です。殿様役の春之丞さんはきょうは「儲け役」でしたね。きれいな衣裳で殿様の気品、貫禄を出し、最後までその線を崩す必要はありませんから。京之介さんが芝居上の話にわざと「現実」を持ち込んで、春之丞さんが儲けものの役にちゃちを入れておられました。

春之丞さんが時折みせられる地の部分、彼の人柄の良さがにじみ出ています。なによりも座長としてのオーラには圧倒されます。非常にアグレッシブに前に出られると同時に、周りに気遣いをされるという座長としての気配り、加えて微笑まれたときにいつも出ている2本の前歯の愛嬌(コレ、ヨケイか)こういうことすべてを加算してゆくと、「愛らしい人柄」という答えが出ます。

この劇団ほど「民主的」(?)な劇団をみたことはありません。若手の男性陣、それに女性陣もすべてがソロを踊るところによく顕われています。劇団員一人ひとりを大事にしておられるというのが伝わってきます。私が去年3月に初めてこの劇団を観たときよりも、座員全部が格段に成長されています。座員ひとりひとりをいかに伸ばすかということに注力されているのがわかります。

わりと前の席だったのですが、端だったので、それにiPhoneですのでぼけています。今日は写真は撮らないつもりでしたが、誘惑に負けました。

第3部は女形大会でした。また女性演歌歌手の方の出演もありました。

真之輔さん、この中世的なドレス、とてもお似合いでした。美しく神秘的な深窓の貴族令嬢という感じでした。

f:id:yoshiepen:20190226075946j:plain

目も醒めるようなブルーの着物にきらびやかな髪飾り、孔雀の羽の扇をくゆらしながらの「孔雀姫」でした。こういう衣裳が似合うのは春之丞さんをおいてはないでしょうね。あまりに美しいので、しばらく茫然でした。周りからもため息につぐため息でした。まずは後ろ向きで。

f:id:yoshiepen:20190226080029j:plain

孔雀の羽をつけた華麗な前。美しさは衣裳に負けていません。

f:id:yoshiepen:20190226080046j:plain

最後の「湯の町小唄」。とても明るい、艶っぽい芸者さんでした。

 

f:id:yoshiepen:20190226080104j:plain

群舞ですが、背景がキレイ!それに踊り手も負けずにイキです。

f:id:yoshiepen:20190226080121j:plain