okamehachimoku review

大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『三つの魂』劇団花吹雪@新開地劇場2010年11月16日夜の部

お芝居は『三つの魂』でした。長崎のバテレンの兄弟妹三人が幼い頃迫害で両親を失い、逃げる途中にはぐれて散り散りになり、成人してから再会するも、盗賊の首領に岡っ引き、そして盗賊の手下の妻という皮肉な運命のめぐり合わを嘆きあう結末になります。

今は岡っ引きになっている兄を愛之介さん、その弟で盗賊の首領を春之丞さん、一番下の妹をかおりさんが演じられました。その妹は、もと盗賊の手下で錠破りの天才だったけれど今は堅気の床屋になっている真之輔さんと一緒になって、子供までもうけています。倉破りをするのに、バテレン盗賊の春之丞さんは足抜けをした真之輔さんをおどして大店の倉へ押し入りますが、そこを岡っ引き(実は兄)に見つかり手傷を負います。

真之輔さんは家に逃げ帰りますが、そこへ岡っ引きがやってきて捕らえられます。それを嘆いた妻が、岡っ引きに向かって自分と兄二人がキリシタンで迫害を受けた身の上を明かします。その話を聞いた岡っ引きは自分こそがその兄だと明かします。

家の奥に押し入ってこっそりと隠れていた盗賊の首領がその場に出てきて、真之輔さんが倉破りをしたのではなく、自分こそが首謀者だと名乗り出て、お縄になります。彼こそが二人の兄弟だったのです。

兄役の愛之介さん、とても貫禄がありました。口説も非常に滑らかでした。かなり重い役ですが、そつなく演じられておららたので、若いのに実力のある役者さんだと感心しました。

かおりさんはいつみても安心していられます。情感を出されるのがとくに優れておられます。

真之輔さんは見るたびごとに巧くなられています。年齢以上の役をするのは普通違和感があるところ、ごく自然に役になりきっておられます。まだ21歳です。舞踊にもいえますが、キレがとてもいいのです。それでとても清潔な、そしていなせな感じがします。

春之丞さんは、もういうことがありません。降参です。オーラが半端ではありません。このバテレンの盗賊役、世間に疎まれ、迫害を受け、それゆえにバテレン盗賊になったのだろうというその背景までもがごく自然に納得できる役を作り上げられています。孤高を守りながら生きてゆかざるを得なかったその厳しさ、そして何ものにも靡かないそのプライド、そういう複雑な心模様を巧みに演じられていました。脱帽。

この日は幸いというべきか最前列に席がありましたので、写真は少しはましなものが多目に撮れました。

以下「白浪五人男」。春之丞さんの駄右衛門

f:id:yoshiepen:20190226084010j:plain

真之輔さん

f:id:yoshiepen:20190226084052j:plain

愛之介さん

f:id:yoshiepen:20190226084114j:plain

真之輔さんの可憐な女形とさわやかな立ち。

f:id:yoshiepen:20190226084132j:plain

f:id:yoshiepen:20190226084152j:plain

春之丞さん。いろいろな表情、ごちそうさまです。

f:id:yoshiepen:20190226084216j:plain

f:id:yoshiepen:20190226084231j:plain