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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『恩愛夫婦旅笠』都若丸劇団@ぎふ葵劇場 5月26日昼の部

以前に明生座で観たお芝居で、このブログ記事にもしている。他劇団でもみたことがあるが、劇団によって強調するところが違っていた。若丸ヴァージョンは、年かさの夫婦の夫(若丸)がいかに妻を赦すかというところに重点がおかれている。この夫の演技力に芝居のすべてが収斂している。若丸さんの本領発揮である。

諸般の事情はあったにせよ、一度は夫を裏切った妻、それも年下の男とそういう仲になった元妻。赦せない。でも恋情、執着はいぜんとして彼女に持っている。切ろうとしても切れない未練。そしてそれを上回る元妻への憐憫。そんな女など打ち捨てて、新しい生活を始めれば(旅をかければ)済むこと。でもなぜかそれができない。そういう男の煩悶、そしてそれを克服するサマが実に真に迫ってくる。観客がその男に感情移入するのがごく自然に起きる。だから、この主人公が、最後には妻と元の鞘に納まったのに、観客一同心からホットするのだ。このあたりの細かい演技、さすが若丸座長。 

対するゆかりさんも若丸さんの演技にひけをとらない。はずみで若い男と懇ろになってしまった。どこかでその男のことを憎からず思い始めていた。そういう自分への嫌悪感、また元夫への申し訳なさ、こういう矛盾した感情の坩堝の中に放り込まれ、悶々とする女。そこへ夫が現れた。動転する女。若い男は元の妻とよりを戻し、去ってしまった。一人残された女。そして、自分が元夫への愛情を裁ち切れていないことに気づく。夫は赦してくれないだろう。でも、一縷の望みを持ってしまう。この辺りのゆかりさんの、洟をすすりながらの迫真の演技、もうアカデミー賞レベルです。人生経験が決してムダになっていないことの証です。

二人が一緒に濡れた着物を絞る場面、また、二人で水たまりを飛び越えるシーン、可愛くて、切なくて、泣けた。前にみたときは涙腺は緩まなかったのに、今日は泣いてしまった。最高のカタルシス、ありがとうございました!

特筆すべきは、座長の「細かい演技」。一例は刀の鞘にたまった水を抜くところ。ご自分で「細かい演技」とおっしゃっていました。こういう「注釈」いかにも若丸座長。これだから、やめられない、若丸劇場。

以下、舞踊ショーでよかったもの。

座長 立ち「山河」 

 白い着物に黒の上下袴姿。扇を持っての入魂の舞踊。すごい迫力。

 

座長 立ち「総司絶唱

 金髪。白着物にコバルトブルーの羽織。羽織の背には「誠」。生きがいいようで、どこか退廃の匂いがした。

 

座長 歌 小田純平、「酒の川」

 

星矢 立ち「恋散華」

 黒着物で。凛々しくもセクシー。

 

剛    立ち 「粉雪」

金髪、白着物で。しなやかで優雅。

 

座長  女形 「夜来香」

 赤黒が半身になった金ラメ入りの着物に支那風の扇をもって。ダイナミック、でも女っぽさ全開。