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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『しじみ売りと八兵衛』都若丸劇団@羅い舞座京橋 3月3日昼の部

私には(めずらしく)初見のお芝居。

若丸さんの芝居は構成が緻密。大衆演劇によくある「えっ?」と戸惑うことがまったくない。リーズニングがきちっとできているので、無理なく楽しめる。

土地のヤクザ一家の親分は人望が篤かった。というのも人助けに骨身を惜しまなかったから。でもそこは若丸、百パーセント「善人」をちょっと外して演じます。こういうところさすが。

 

日頃から助けてやっている貧しいしじみ売りの少女(ひかる)。彼女が親分に助けを求める。彼女の母は田舎の庄屋で、その母が訪ねてくるというのだ。彼女は母に「自分は織物問屋の女中頭をしている」と、嘘をついていた。何とかして母をがっかりさせたくないとすがる少女に、親分は一計を案じる。それは一家を「織物問屋」に仮仕立てしてしまうというもの。親分はそこの主人、子分は店の手代ということにしようという。で、親分が堅気の立ち居振る舞いの訓練を子分たちに施す。こういう場面は若丸さんの独壇場。ケッサク。

 

しじみ売りの少女の母(月宮弘子)は一ヶ月後にやってきた。なんとかその場を取り繕い、やくざ一家ではなく「織物問屋」にみせかけようとする親分と一家の手下たち。これもオカシイ。

 

「娘の様子に安心した」といって、母は帰って行く。途中まで見送った娘が去ったあと、母はちょっとした思い入れをして、また歩を進める。親分が後ろの塀から顔を覗かせるが、母が振り返るので慌ててまた隠れる。その親分にむかって「親分」と呼びかける母。実は彼女はすべてお見通しだったのだ。この場面の「親分」と呼びかける母の間の取り方、ゼツミョウで唸った。さすが若丸さんの母上。彼女は親分に娘のために芝居までしてくれたことを感謝。帰って行く。