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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『日本おかしばなし』in「若ちゃんまつり」都若丸劇団@朝日劇場 6月24日夜の部

「若ちゃんまつり」と銘打っての公演。ものすごい人の数。通路はもちろん最前列席の前にも、さらには入り口をつぶしての座席がしつらえてあった。「マジメなお芝居を期待する人は遠慮してください」と若丸さんから事前にアナウンスがあった。そうなると大阪人はなおのこと行きたくなるんでしょうね。

若丸さんんが「ぱぱっと作って、ぱぱっと25分ばかり稽古しただけ」というわりにはとても手のこんだプロットだった。「日本昔ばなし」の代表的なもの--

『桃太郎』、『浦島太郎』、『鶴の恩返し』--などが組み合わされていて、それぞれがうまく繋がるよう工夫がしっかりされていた。全体の枠組は『桃太郎』で、そこに『鶴の恩返し』を嵌め込んだ感じ。以下、ざっと筋を。

桃から生まれた桃太郎(若丸)。おじいさん(城太郎)とおばあさん(ゆかり)はすでに成人した状態で生まれて来た生意気な桃太郎に手を焼き、鬼退治に行けば養ってやると約束し、金子ときび団子を与える。

 

体よく追い出された桃太郎。森の中。空腹をかこっていた雉子(舞斗)と猿(英樹)と犬(虎徹)にきび団子をにやる。その礼としてに鬼退治に一緒に行こうともちかけるのだが、断られてしまう。怒った桃太郎は三人(匹?)から巾着を巻き上げる。

 

森の中。桃太郎は罠にかかっていた鶴を助ける。その夜、桃太郎が助けた鶴(ひかる)が桃太郎の宿に押し掛けて来て「恩返しをしたい」という。実はそれが枕荒らし、まんまと桃太郎がひっかかり、自分のもののみか雉子、猿、犬たちの巾着も盗られてしまう。「鶴じゃなくてまるで鷺(サギ)やがな」とぼやく桃ちゃん。

 

ところかわり、海辺。さきほどの鶴と亀(あきら)が戦利品の確認をしている。二人(匹?)は実は夫婦だった。そこを桃太郎に見つかってしまう。桃太郎はお詫びに何かしろと鶴・亀に迫る。困った亀、竜宮城に連れて行ってやる、「きれいなネエちゃんがいっぱいいまっせ」と桃太郎にもちかける。「竜宮城」は「竜宮城」でもどうもキャバクラのよう(とわざとすりかえた話をする二人。すっかり乗っていました)。桃太郎は水の中に入るのが怖いと、その申し出を断る。ふと横をみると、なにやら若い男(剛)が「玉手箱」をためすがめつ「吟味」している。あの童話に出て来る浦島太郎のナリで。亀がいうことには、竜宮城に自分が連れて行った男だという。

 

桃太郎、浦島太郎、鶴、亀がとある料亭に集っている。そこに役人達(山田さんたち)が踏込んで来る。そして全員をお縄にする。

 

奉行所のお白砂に並べられた四人(このセット、さすが朝日と思わせる完全なもの)。すました顔で星矢さんが記録をとるのに墨をすっているところまで、「遠山の金さん」番組ばり。役人が罪状を読み上げる。なんでもきび団子を食べた三匹が食中毒で死んでしまったのだという。鶴亀に関しては、今までの巾着切りの罪状。自分にはまったく非がないと抗議する浦島太郎。はやく「玉手箱」を返せと喚いている。

 

そこに頭が真っ白なよぼよぼの老奉行(若丸)登場。浦島太郎の玉手箱を開けててしまい、老人になっていた。このときの若丸さんの演技、オカシカッタ!お客さん、大喜び。

こんな手のこんだ、しかもきちんとオチがつくよう「合成」された話を考えつくとは、センスイイ!

舞踊ショーはいつもの二倍、座長の出番があった。印象に残ったのは金の刺繍と光ものの付いた真っ赤な着物、長髪でおどられた「男酔い」。今まで観てきたものとはまったくちがった「若丸バージョン」。ラストは「Paradiso」、アンコールは「一本釣り」。