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大衆演劇のお芝居ってどんなの?(独断・私見の)大衆演劇観劇ガイド

『下田港の暴れん坊』都若丸劇団@梅田呉服座 7月29日昼の部

あらすじは以下。

第一場

舞台は江戸。美人で評判の芸者千代丸(ひかる)には長吉(剛)という相思相愛の男がいて、彼と一緒になりたいと願っていた。芸者置屋、一文字屋の女将のおさい(ゆかり)も二人を応援していた。そこに横やりを入れたのが山形屋の親分(城太郎)。身請けの金だといい、大枚の金子をみせびらかす。この辺り、『封印切』もどき。問題は元やくざの長吉、今はさる大店の手代をしていて到底千代丸の身請け料を払える身分ではない。

 

山形屋が店先で息巻いているところへ、長吉が名乗り出る。身請けの金の入った財布をちらつかせ、千代丸は自分のものだと言い張る山形屋。財布を無理矢理女将(ゆかり)に押し付ける。そこにやって来たのは長吉のかっての兄弟分の銀次(秀樹)。千代丸の身請け料だといって、金子の入った財布を女将に渡す。すかさず、千代丸は長吉に身請けされたと告げる女将。

 

第二場

千代丸と長吉は晴れて所帯をもち幸せに暮らしている。腹の虫が収まらないのは山形屋。なんとしても千代丸を自分のものにしようと、計画を立てる。それは千代丸を待ち伏せし、そのまま勾引すというものだった。

 

湯(風呂)帰りの千代丸を待ち伏せし、強引に連れて行こうとする山形屋の手下たち。(星矢・舞斗)。なんとか逃げようとする千代丸。そこに派手な襦袢様の赤地(そこに色々な姿態の湯浴み女が描かれていました)着物を着た男(若丸)が割入る。手下たちは退散する。この男、千代丸の色気にすっかり参り、しつこく言い寄る。自分は亭主持ちだと相手にしない千代丸。二人の丁々発止の綱引きのやり取りが笑わせます。千代丸はまったくこの男にとりあわず、男はあえなく撃沈。それでも諦めきれない、往生際の悪い男。お気の毒。

 

第三場

千代丸と長吉の新居に手負いの銀次が逃げ込んで来る。山形屋の手下たちの闇討ちにあって瀕死の重傷を負っている。それをみて、今は堅気になった長吉も無念さに涙する。ドスを取り、止める千代丸を振り切って仇討ちに飛び出して行く。

 

残された千代丸が長吉を案じているところに、雨宿りをしようと例の男が駈け込んで来る。とうとう(?)顔をあわせた二人。「亭主はどうした?」と聞く男に、「命が危うい」のだと応える千代丸。「さては、俺のために亭主を?」と、早とちり(?!)するその男。亭主が兄弟分の仇討ちに行ったのだと「説明」し、奥にいる銀次の死骸を示す千代丸。奥の死骸を見た男、「えっ、これは銀次じゃないか」と叫ぶ。このあたり、思いっきり大衆演劇のクサーイ芝居のパロディです。それもスローモーションで演ってみせるという念の入れよう。若丸さんならでは。最高!ここで、この男が銀次とは兄弟分らしいと分かる。

 

亭主の長吉の加勢をしてくれとその男に頼む千代丸。なんやかやと「言い訳」をしつつ、はぐらかす男。挙げ句の果てに「亭主死んでこい」とまでいう始末。この「軽さ」もモダンです。モダンというよりポストモダンというべきかも。

二人の会話から、この男は元は侍だったことが分かる。珍妙な着物を着ているが、たしかに腰には二本差しである。なぜそんな格好をしていると糺す千代丸に、「これにはいろいろふかーい訳がある」と、思わせぶりな男。阿吽の呼吸のこの話芸、絶妙です。どんな役者も敵わない。無敵!

 

「亭主を助けて欲しければ、自分と一緒になれ」と迫る男。千代丸は仕方なく同意する。さっそうと出かける(はずの)この男、戸口で駆け出す仕草を数回繰り返す。まったく進む気配もなく、最後には「歩いた方が速い」といいつつ、花道を引っ込む。とことんスットボケています。

 

第四場 

果たし場では長吉と山形屋一味が対峙している。

 

そこへ例の男が飛び込んで来る。顔を見合わせた二人、互いを「長さん」、「仙ちゃん」と呼び合う。どうも知り合いらしい。この男、長吉に当て身を喰らわせ(堅気の彼に罪をきせないため)気絶させる。「なんじゃ、このほうずきのバケモンは」と言いつつ立ち向かう山形屋。到底勝ち目はなく、最後はこの男にことごとく斬り捨てられる。

 

気絶していた長吉の目を醒させる。この男、名は仙太郎というらしい。ここからが若丸さんのひとり芝居。千代丸が自分に「なびいたサマ」を「実演」してみせる(もちろん、すべてフィクションというか彼の妄想)。このときの「ヤンスことば」(「花魁ことば」で、普通の芸者がつかうものではない)、ケッサクでした。

 

そこに千代丸が駆けつける。仙太郎とそんなやり取りをした上、女房になる約束までしたのかとなじる長吉。謝る千代丸。その様子をみた仙太郎、男らしく身を引くことにする。寂しそう。哀しそう。その落ち込んだ様子をみた長吉こと剛さん、「最後くらい主役らしい顔をして」と座長を励ます。といった具合に(?)最後は「心温まる話」というオチになっていました。人の心の機微をさりげなく、しかもしんみりと描き出す芝居なんて、そうありませんよ。この複雑さ。センスの良さこそ若丸座長の身上です。 

舞踊ショーの主たるものは以下です。

ミニショー

剛・星矢   流氷子守唄

星矢さんは普通にブルーのタイツなのに、後で登場した剛さんは丈の短いグリーンのタイツで。ちょこまか、ちょこまかしか動けず、大笑いでした。

 

英樹      女

歌詞にあるなすびの褌をさいごにみせて。

 

若丸  立ち  紅灯の海

 

第三部

若丸    女形  未練歌

 

紗助      何よりも大切なもの

 

若丸 歌    クチナシの花

 

若丸      最後の雨

 

若丸        山河

 

ラスト舞踊   FUNK FUJIYAMA

このラスト、最高にオカシイ。前に見ていっぺんにファンになったもの。オシャレ!残念だったのはバカ殿の虎徹さんが病気で出演できなかったこと。でもその代わりをあきらさんが立派に務めておられました。